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ルバイヤート ハイヤーム編
みなさんこんにちは、川越市六軒町にある就労継続支援B型事業所あしたのタネ川越六軒町のmです。
*今回は暗めの哲学作品をご紹介しますが、光あれば影ありというように、哲学にも陰陽ありとお考えの上でご拝読ください。

皆さんは「ルバイヤート」というイスラームの詩集をご存じでしょうか?外国文学や世界史が好きな方はご存知かもしれません。 作者は12世紀イスラーム・セルジューク王朝の大賢者ウマル・ハイヤームです。ハイヤームは数学の研究や現代にも応用され使われている正確な暦の作成をはじめとする様々な功績のある人物でした。しかし、彼は「ルバイヤート」の中において極めて厭世的な詩を作り上げており、天才にも悩みがあることを知らしめるものとして世に残しました。
本著は日本では一部翻訳の著作権が切れているので、「青空文庫」というホームページで自由に読むことができます。(これは小川亮作訳版に限ります)
またの名を「四行詩集」といいますが、その通りに全ての詩が4行で、さらっと読むには簡単に読み終えることができますが、その内容は非常に示唆に富み、イスラーム世界の知識が必要なものもあります。また、ハイヤームは飲酒を賛美していますが、当時のイスラーム世界では、神様が固く禁じているとはいえ、一般人の飲酒は現代ほど問題にはならない時代だったそうです。(逆に今だと大問題になります)

さて、厭世的と申しました通り、この作品は暗めで、世を憂う言葉がかなり含まれます。特徴的なものに「今が良ければそれで良い」「明日のことを考えるのは辛いだけ」と言った刹那的思想と、「自分が世に生まれて何か益があったか?」など自己の存在論的なものを問う詩を残しています。 当代一の天才にして、現代にも影響を与える大賢者でも、悩みは尽きず人生は辛い、未来のことはわからない、だから考えるだけ意味がない、よってお酒でも飲んで快楽に浸りただ今のみを楽しもう。ハイヤームの言わんとするところとしてはそのようなものなのでしょう。 人類の文明、その始まりから、人はいつの時代も皆何かで悩んで生きている、自分が幸せであるかは必ずしも金銭や自身の賢さ、地位や名誉によるとは限らないのでしょう。

ハイヤームのこの思想は近視眼的と言った意見の方もおられるとは思いますが、確かに明日が幸福な日になるという保証はありませんし、今を享楽せよと言う考えには一定の理があると言えるでしょう。昨今日本でも暗いニュースや突然起こるひどい事故、事件の報道が増えました。 しかしそんな時代だからこそ、ハイヤームの主張する、哲学は世に知られるべきなのではないでしょうか? 以上で哲学シリーズ3 「ハイヤームとルバイヤート」を終わります。 参考文献 ⚪︎岩波文庫 ウマル・ハイヤーム作 小川亮作訳 「ルバイヤート」
